纏考察・198~200巻編

198巻

冒頭「夏の旅行の巻」
いつ以来でしょうか、な両さん、纏、檸檬で出かける話。
サーフィンをしにジョニーの島へ向かいます。

あらためて纏たちと過ごす両さんを見ていて
擬宝珠家は家庭を持った両さんを擬似的に再現
するために作られた事を再認識させられます…

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纏のような奥さんと、檸檬や蜜柑のような子ども、
犬に囲まれた穏やかで優しい父親の両さん。
それはパラレルではありません。

この話で擬宝珠家の愛犬雪丸のルーツも明らかに。

「亀有祭の巻」は祭回。前回は春が出ていて
纏は姿すら見せませんでしたが今回は檸檬、蜜柑共々
登場します。

見ていて思いましたが、やっぱり祭回には両さんと
纏二人が揃うとしっくり来ます。
 もう一つ気付いたのは121巻でもそうでしたが、両さんは
祭好きですが、自分だけはしゃいで騒いで楽しみたいと言う
事では無く、そこにいる人、連れている仲間や家族にも
楽しんでもらいたいという思いが強い事がわかります。
檸檬や蜜柑もそうですが
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自分と同じ祭好きな纏のためにちゃんと気を使う
大人な両さんは格好良いです…

出ない時は全く出なかったのに、堰を切ったように
この巻には登場します。
「われらレコード世代の巻」は久々に擬宝珠家の
居間スタート。内容自体は擬宝珠家と関係ないのですが
ソノシートの再生を手持ちの物や、ちょっとした
工作でやってのけ、纏たちに感心される様は
懐かしい感じすら漂います。

そう言えば早矢もこの所見ていなかった気がしますが
登場します…けど…早矢ってこんな顔でしたっけ…?
左京が混ざったみたいな顔になってますけど…

999巻

最初、何だそれは? と思ったんですけど
こち亀999巻ってちゃんとあるんですね。
WJ以外の13誌に出張掲載されたものを
まとめたのがそれだと言う事です。

一つの漫画が同じ雑誌社のものとは言え
違う雑誌に出張する何てのは前代未聞。まさに
こち亀でないと出来ない事と言って良いでしょうね。

この13誌出張は、こち亀の連載35周年を記念した
企画との事なので、完結の五年前と言う事になります。
コミックスで言うと177巻の時期です。

登場する頻度にばらつきのある纏、擬宝珠家ですが
177巻の辺りは、登場回数がかなり落ち着いて
しまってます。

13の各誌に掲載された話は、絵のタッチから両さんの
相手、話のノリまでガラリと変わります。
マーガレット掲載話はオリジナルキャラのロボット話
別冊マーガレット掲載話は中学時代の両さんの
下町と、恋を絡めたお話。
コーラス掲載話はリカが登場。イケメンも出るよw
ビジネスジャンプでは中川の会社に就職。身も蓋もない
メタ的な発言も飛び出します。
スーパージャンプ掲載話は「いいゆだね!」との
クロスオーバー。マリアが出て来ます。

ウルトラジャンプ掲載話は檸檬とプラスが主役。
浅草へ出かけた二人は過去へタイムスリップして
しまいますが、そこは過去は過去でも東京五輪が
行われなかったパラレルな過去でした。
夏春都も喜一郎さんとは結婚していない様でしたが
檸檬を元の未来に戻れる様に手助けしてくれます。

Vジャンプ掲載話は4ページを
無駄なく無駄に使った構成。本田登場。
ヤングジャンプ掲載話はAKB48ともコラボ。
YOU掲載話はデカワンコとのコラボ。
ジャンプスクエア掲載話は「Mr.Clice」との
クロスオーバー。秋本先生の言葉通り、警官の仕事を
シリアスにこなす両さんが見られます。
ザ マーガレット掲載話はレギュラー陣出演の
ほぼパラレルなスピンオフ。女子高生の麗子、その高校教師の
中川、お上りさんな両さんと本田などいつもとは
全く違ったキャラになってます。
Cookie掲載話は両さんが異動になり
マツコデラックスの様な占い師になっちゃたり、麗子が
両さんを意識したりと言うお話。

余談ですが「クッキー」ってどんな雑誌だろうと
思って調べたところ、かつて「りぼん」で名を馳せた
作家さんが名を連ねている
少女向け雑誌でした。

で、肝心の纏たちが登場するのは999巻初っぱな
りぼん掲載話「檸檬の遠足の巻」
産休に入る檸檬の幼稚園の先生。仕事熱心な先生が
その状態でも遠足に行くと聞き、両さんも同行する事に。
 先生の熱意を認めつつ、園児たちは先生の体を心配している
と言う事を優しく諭す両さんが印象的です。

他の注目ポイントとしては
別冊マーガレット掲載話「〜勘吉青春恋語り〜」
両さんの子ども時代を描く話はよく出て来ますが
これは両さんの中学時代のお話。

両さんが憧れていた同級生夏樹風乃との話なのですが
そのビジュアルが…
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またつり目のポニテなんですね両さん…

ちなみに現代で再会した風乃は髪を染めて伸ばしているので
このときの面影はあまりありません。

199巻

いよいよ最終前巻の199巻です。この時点で完結は決まって
いたのでしょうか?

198巻では登場が多かったですが、199巻ではやや少なめ。
両さんの寮の部屋が汚いと言う話になりますが、超神田寿司から
再度独身寮に戻っちゃたんでしょうか? 残念が退去した部屋を
そのまま使っているようですが。
なお纏の登場はこの回の数コマだけです。

200巻

最終巻です。
最終巻だからと言って完結に向けて何かが高まるといった事はなく
平常運転なのがこち亀らしいです。それでもプラスの学校を見て
技術革新する未来を想像したりするシーンは良い感じです。
 この先の子どもたちはジャンプにこち亀が載ってない世代に
なるんですねえ…

「寿司講座の巻」は超神田寿司回。檸檬の幼稚園へ
寿司の教室をしに両さんが向かいます。その流れで纏の
母校桜稟女子中学校からも実習依頼を受ける両さん。創作寿司などを
認めない頑固な教員を前に、寿司の文化や歴史を説きます。
修学旅行の女子高生を迎えたときもそうでしたが、両さんは
寿司にかなり詳しくなっています。

 しかしさすがに最終巻。キャラが色々出て来ますね。
憂鬱と右京、春たち大阪の面々、雑や残念、根画手部
京華といった近年顔を出しているキャラはだいたい
登場しました。

そんな中「夏の旅行IIの巻」
前置き無しに再び纏、檸檬とジョニーのサーフィン島へ
訪れる話。
ジョニーの見つけた無人島へ行く事になった両さんたち。
そこでなぜか炒飯を作る事になった纏は四苦八苦ですが
そう言えば纏って料理の腕はどうなんでしたっけ?
超神田寿司なので普通に出来そうですが
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と両さんの談。

雪丸の生まれた島で迷い犬を発見。雪丸に懐いてしまった
その犬を最後は連れて帰る事に…
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最終巻らしいエピソードなのが
「永遠の腕時計の巻」。冒頭から擬宝珠家で始まります。
連絡を受け派出所へ急ぐ両さんを見て
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え? どちらかと言うと寿司屋回が最近全然無かったはずですが…

ロレックスを預かった事から、高級時計のコピー品を作っていた
話になり、今回もそういう話かと思いきや物語は思わぬ方向へ。

 直前に寿司屋の客にロレックスを売ろうとしたのをたしなめられた
両さん。その流れで夏春都に古い時計は無いかと聞いたところ
夏春都が両さんに譲ったのは、亡き喜一郎ゆかりの時計でした。

動かないし、直らないのであげる
とサッパリ言いますがその横顔は複雑そう…
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 この後、両さんは即座に纏から借金して渡米。現地のコレクターに
時計の修理を依頼したのでした。

最終話である「40周年だよ全員集合の巻」には
擬宝珠家は一人も登場しません。しかし、その前の回をほぼ丸々
擬宝珠家に費やしていると考えると、その扱いの大きさに
驚かされます。

注目ポイント…夏春都の話

志摩子さん、私わかった事がある。

原作を100巻から完結まで一通り読んでみて
なんかこち亀、そして両さんが思ってたイメージと違いました。
じゃあそのイメージは何なのだろう? と考えた所どうも
アニメ版から来ているみたいです。

まず第一に夏春都は両さんを毛嫌いしている気がしたのですが
これはアニメの方だったみたいですね。
何度か紹介した通り原作を見てみると、夏春都は両津家の男は
ラテン系と言っている事や、兄勘兵衛と80年間も連絡を
取り合っていないと言っていますが、特にいがみ合っている
わけでは無いですし、子どもの頃に勘兵衛が芋を
取って来てくれた事を覚えていたりと、悪く思っている
様子はありません。

 幼少の両さんを勘兵衛の孫と知っていた事から、直接連絡を
取りあっていないだけで、お互いの状況を知る何らかの手段が
あったのかもしれません。

 なにより夏春都は両さんの事を嫌っているそぶりを見せた事が
実はありません。陰でバカ吉と呼んでいる、などとも言われますが
本編を見れば両さんをバカにしたりするより、両さんに感心したり
大事なことを任せる時が多く見られます。

アニメの夏春都はいつも怒った顔をしている印象がありましたが
原作の夏春都は静かに考え込むような顔が多いです。両さんの
行動をいつも見守っている印象さえあります。

両さんの側もまたアニメとは違い、191巻秋葉原店の時など
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秋葉原に外国人観光客が増えていると聞き両さんはいつもの
口八丁で夏春都を言いくるめているように見えますが、実はこの時点で
秋葉原店の儲けの何割もらえるとか、支店独立とかそういう話は
一切していません。
つまり単純に超神田寿司の一人として夏春都を説いている。

 改めて見ると、超神田寿司登場から巻が進むごとに
寿司やそれに関わる魚の話で両さんはふざけたり、利益を追求
したりしなくなります。

 纏が出て来ないので紹介しませんでしたが同巻には
青森からの修学旅行生が間違って超神田寿司に入ってしまうという
エピソード(「私の修学旅行の巻」)も注目です。

修学旅行の高校生が高級寿司店で食事出来るはずもない所、
両さんは機転を利かせ、さらに青森からと聞き大間の鮪と共に
「一番贅沢で美味しいのは地元の穫れたての魚を食べる事だ」
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との言葉も…

超神田寿司の職人浅草一郎は真摯で心優しい
職人なんです。そして夏春都はそこを評価しているんですね。

擬宝珠喜一郎とは

 夏春都が両さんを買う理由。それは夏春都の夫で纏たちの祖父
喜一郎さんにありそうです。作中でほとんど語られる事はなかった
擬宝珠喜一郎ですが、その人物は機械好きで仲間を大事にする
どこか両さんに似た人だったようです。
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交通博物館にもゆかりがあり鉄道も好きだったみたいですね。
孫の憂鬱、そして両さんも鉄道模型好きです。

 キッパリさっぱりとしている夏春都ですが、喜一郎の遺品にあった
軍票(181巻で登場した紙幣)、そして時計は大切に補完されていました。
一度は金に目がくらんだ両さんでしたが…
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顔はギャグ。檸檬に諭されんなw
笑う所なのかもしれませんが、実は両さんのアイデンティティそのものを
揺るがす大変な事に気付いてしまってます。

秋本先生の根底にあるもの?

こち亀には戦車が出て来ます。戦闘機も出て来ます。銃器もわんさか
出て来ます。町中で銃を撃ち合ったり、ミサイルをぶち込んだりも
日常茶飯のギャグ漫画です。

しかし戦争を美化しているわけではありません。
196巻のオウムの話などを見ても戦争の悲しい部分が描かれます。

夏春都は戦争、それによる食糧難や離別を体験しているからこそ
家族のつながりを重要視しているのかもしれません。
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右のコマのセリフなど両さんらしからぬものに思えます。
お金が大好き、高いものならば旨い。でも本当にそうなのでしょうか?

高級寿司屋で働くようになり、日常的に高級食材に触れるようになった
両さんは、擬宝珠家と言う輪の中でもっと大事な何かに
気付いてしまったのかもしれません。

実家に帰らなかったり年賀状を出さない両さんをたしなめたのも
両さんに家族の大切さを教えたかった夏春都の愛情なのではないでしょうか。


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